[書評] 「図解即戦力 モバイルゲーム開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書」
こんにちは、ゲームソリューション部の入井です。
今回は、ソーシャルゲーム等のモバイルゲームの開発について、具体的にどのようなことをしているのかを解説した書籍「図解即戦力 モバイルゲーム開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書」を読んだ感想を書いていきます。
章別の感想
1章 モバイルゲーム開発の基礎知識
モバイルゲーム自体についての解説とともに、プロデューサー・ディレクター等どういった役職の人物が開発に関わっているかの紹介の他、全体の開発ステップについても大まかに解説されています。この章を読むことで、後の章で詳しく解説される様々な要素が、ゲーム開発の工程を俯瞰した際にどの立ち位置にいるのかが分かるようになっています。
ゲームのプロトタイプ版やアルファ版、ベータ版についての解説もあり、それぞれ具体的にどのような段階であり、何を目的としているのかを知ることができました。
2章 プロジェクト開始
1章でゲーム開発の全体像についての解説が終わり、2章からはそれぞれの工程についてより詳細な解説が書かれていきます。2章では、一番最初の工程である企画書作成・プレゼン、プロジェクトメンバーのアサイン、マネタイズ方法などについて解説されています。
特に企画書がどのような形で使われていくのかについてはぼんやりとしかイメージできていなかったため、その役割や重要性について知ることができて良かったです。
3章 プロトタイプ開発
ゲームのプロトタイプ版開発の流れについて解説されています。このプロトタイプ工程では、ゲームのコア部分を最低限の要素で組み立て、それが企画書でイメージした面白さをちゃんと実現できているかを確認していきます。
「ゲームの面白さ」というのは、客観的な数値化が困難な概念です。そのため、プロトタイプが面白さを実現できているかは、基本的に実際にプレイしてみないと分かりません。その上で、評価者はできるだけ客観的な言語化によるフィードバックを行い、開発メンバーはそれを受けて企画書のイメージに近づくようにスクラップアンドビルドを繰り返すことが必要となるようです。
4章 アルファ版開発
アルファ版とその開発の流れについて解説されています。アルファ版は、プロトタイプを更に発展させて一連のゲームサイクルが検証できるようにした段階と定義づけられています。
グラフィックやサウンドもこの段階でほぼ完成版に近いクオリティのものを実装するとのことで、それらのディレクション作業についても具体的に書かれています。
5章 ベータ版とデバッグ
ベータ版の開発とその後に行われるデバッグ作業について解説されている章です。
ゲーム全体について製品版と同等レベルまで開発を進めていき、グラフィックやサウンドなどのアセットについていわゆる量産が始まるのがこのフェーズです。その後のデバッグでは、テストの実施とそれによって見つかった不具合の修正を行い、マルチプレイ要素のあるゲームではこの段階で負荷試験なども実施されます。
意外に感じたのは、リリース後に配信する追加コンテンツについてもこの段階で平行して開発を開始するという点です。理由についての記載はありませんでしたが、恐らく一度構築した開発体制をそのまま利用する方が効率が良いからと思われます。
6章 配信と運用
この章では、ベータテストや各ストアでのリリースなど、実際にゲームをユーザーに触れてもらう段階について解説されています。
ソーシャルゲーム等のオンライン形式のモバイルゲームとコンシューマゲームでの一番の違いは、リリース後の運用の有無です。もちろん、コンシューマでもオンライン要素のあるゲームはサーバの運用保守等がリリース後にも必要ですが、モバイルゲームはイベントの開催や追加コンテンツの配信などがより活発に行われます。そういった運用を適切に行うには、ゲームをユーザーがどのように遊んでいるのかを客観的に把握する必要があり、この章ではそういった状況把握に役立つKPI分析の例についても解説されています。
7章 これからのモバイルゲーム
この章ではモバイルゲームの歴史や、ゲーム開発の現場に入るための方法、現場での働き方の変化など、これまでの章とは違った視点の解説が行われています。
近年、スマートフォンの高機能化やPC・コンシューマ機とのクロスプラットフォームの普及によりモバイルゲームの開発規模は年々拡大しており、今後もこの傾向は続くように思われます。
最後に
私はゲームソリューション部に所属していますが、過去にゲーム会社に所属してゲーム開発をした経験はありません。そのため、ゲーム開発について曖昧にしか分かっていない概念が多かったのですが、この本を読むことで解像度を上げることができました。
「モバイルゲーム」とありますが、コンシューマゲームの開発手法ともかなり共通している部分があると思われるので、ゲーム開発全般についての知見を得たい方にもおすすめの一冊となっています。
ゲーム開発の全体の流れを体系的に学ぶことができる資料はなかなか公開されていないため、そういったことが1冊にまとまっているこの本はゲーム開発について学ぶ最初の一冊としてとても良いものだと思いました。